植木がしゃべるなら「なんで、そんな切り方するんだ!」「そんなところで切るなよ!」きっと、こう言うだろう。自分がそんな切り方を、してたなんて、思う人は少ないと思います。
実は、植木の剪定は、人間の勝手な行為で、植木は切られたくないのです。それでも、私たちは様々な理由で剪定します。
そこで今回は、木の立場から見た植木に優しい剪定を、紹介します。なぜ、木は切られたくないか、木の性質を理解すれば、剪定のやり方が、変わることは間違いありません。そして、この剪定方法が植木を大きくしないで、植木の管理費用の節約につながりますから、ぜひ、覚えて下さい。
よく見かける切り方は、木の性質を知らない‼
いろいろな木に関することを話したら、キリがないので、今回は、この2つを覚えましょう。
木の性質① あなたの切り方は、家にドロボウが入る切り方だ! 外敵から守る方法
木の性質② 人は助け合いをするが、枝同士で助け合いは全くない!
この2つは、意外と知られていないことです。詳しく説明します。
木の性質① あなたの切り方は、家にドロボウが入る切り方だ! 外敵から守る方法
木が、切られたくない理由は、切った切り口から外敵(病原菌)が、侵入してくるからです。侵入を防ぐために、木は、防御層を作って、早く切り口をふさごうとします。
写真①は、枝をノコギリで切ったと思われます。残った枝は、枯れています。
防御層を早く作りたいのに、防御層が作られていない。
なぜか?
あなたの玄関のドアに、靴が、はさまっている状態を、想像して下さい。
どんなに力もちでも、そのドアは閉まらない。鍵をかけることも、できない。そのまま開けっ放しにしたら、ドロボウに入られてしまう。
写真の枯れ枝は、まさに、はさまっている靴と同じで、枯れ枝が邪魔で防御層が、完全に作れない状態です。病原菌というドロボウに、侵入されてしまいます。
そもそも、幹は、枝を支えるために、枝のつけ根のまわりを取り囲み、枝を支えるように組織を張り出しています。
その部分をブランチカラーといいます。
写真②の青線で囲んである部分で、写真では、わかりづらいですが、膨らんでいます。
そして、枝の残りを腐らせる菌が、繁殖して勢いを増し、枝が幹に食い込んでいる部分にできる防御層を突破しようとします。
樹勢が強ければ、防ぐことができますが、衰退していると、負けて幹の中まで、材質腐朽菌が入ってきます。
スッーと伸びている枝や不要な枝を、つけ根から切る時は、右図の赤線の防御層が作りやすい、ブランチカラーと枝の境で切ると、切り口の癒合が早くなります。
↓↓防御層がうまく出来上がった切り口↓↓
←左の写真は、 つけ根で剪定した例です。
おわかりですか?
わかりやすい枝を剪定したつもりなので、あえて線は引いていません。
できる範囲でよいので、ぜひ試して下さい。
木の性質② 人は助け合いをするが、枝同士で助け合いは全くない!
枯れ枝をつくらない切り方
上の写真は、アジサイですが、よく見かける切り方です。
芽と芽の間にハサミを入れて、切ったと思われます。そして、一番上の芽より上の枝が、
枯れています。
木には、こんな性質があります。
葉は光合成で糖をつくり、自らの生命活動の栄養素としてます。葉でつくられた糖は、枝から別の枝に流れることは、ありません。枝は、その枝の葉でつくられる糖で生きているのです。
枝でつくられた糖は、新葉が展開するときや花、果実を充実させるときには、上の方に流れることがありますが、その距離は、あまり長くありません。基本的には、その枝から下の幹や根のエネルギー源となります。
写真のように、芽と芽の間で切った場合、残った枝は、緊急事態ですが、だからといって、他の枝が助けてくれることはありません。
葉や芽、花などが切られている残った枝は、ただの棒で、あとは枯れるしかないのです。
枯れ枝ができない切る位置を覚えて、的確な剪定を行なえば、枯れ枝はできません。
参考文献:「樹木の診断と手当て」
堀 大才・岩谷美苗 著
↓↓芽の上で剪定した例↓↓
まとめ
- 枝をつけ根から切るときは、ブランチカラーと枝の境で切ること。
- 枝の途中で切りたいときは、芽の上で切ること。
不要な枝を見極めることは、重要ですが、その枝の切る位置が間違っていたら、植木にダメージを負わせることになります。あまり、切る位置を、重要視してくれませんが、私は、すごく大事なことだと思います。
ご自分で剪定を行なっている方で、枯れ枝がある植木は、切り直してあげて下さい。これから切ろうと思っている方は、本日お話したことを、なるべく実践して下さい。植木を大きくしないで、植木に優しく、きれいな剪定になります。